TOP


[第23話]
第二部 風雲龍虎編! 
俺を待つのは 
戦いだけなのか


 サザンクロスを後にしたケンシロウ一行は、バギーを止め、昼食を取っていた。自らの靴のほころびを修理しながら、物思いにふけるケン。ユリアが死に、シンを倒し、自らの生きる目標を失ったケンには、何処か哀しみが漂っていた。それを察しているバットとリン、ぺルも、もしかしたらこの旅が終わって仕舞うんじゃないかという不安が芽生え始めていた。

 その頃、ケン達がいる場所の直ぐ近くを走るトラックがいた。トラックは各地でかき集めた食料を自分達の村へ運ぶ途中で、もう村の直ぐ側まで来ていたところであった。村の人々の喜ぶ顔を想像しながら、笑顔で帰路を走る男達。しかし、突如地面が盛り上がったかと思うと、3人の人間が地から飛び出し、トラックへと襲いかかってきた。運転手等が「牙一族」と呼ぶその3人の盗賊達は、食料目当てにトラックを待ち伏せしていたのだ。運転手はスピードを上げ、蛇行運転で振り落とそうとするが上手くいかない。ついにはフロントガラスを破壊されてしまい、視界を失ったトラックは岩壁に激突、転倒。それを見届けた部隊のリーダー・ケマダは、仲間達と共に意気揚々と食料を運び出しはじめた。しかし、漏れだしたガソリンが炎に引火して突如トラックは爆発。食料は全て炎の中に消えてしまう。不条理に激怒したケマダは、全ての責任を運転手達に擦り付け、彼等を殺そうとする。だがその時、どこからともなく飛んできた空の缶詰がケマダの目を覆うように突き刺さった。缶詰がポロリと落ち、視界の戻ったケマダの目に映ったのは、怒れるケンシロウの姿であった。トラックの爆発音は、ケンの耳へ届いていたのだ。

 自分達をハイエナ野郎とけなすケンシロウに、仲間達をけしかけ殺そうとするケマダ。しかし数十人にも及ぶ牙一族達がいくら押してもケンの体はビクともしない。逆にケンはその20人近い男達を一つの固まりであるかのようにもちあげ、後ろの岩壁へと放り投げた。ケンの超人的な強さにビビりまくるケマダはその場は退散するが・・・

 襲われたトラックの運転手等を乗せ、バットのバギーは彼等の村へと到着。着いた村は、この時代に希望を見いだした者達が集まる活気に溢れた街であった。長老や、村人の一人コウに村を案内をされる一行は、花壇を発見。もうこの時代の死んだ土では咲かないだろうと思われていた花が、目の前で咲き乱れているという光景を目にしたリンは涙を流して感激する。そんなリンに、独りの女性が話しかけてきた。この村の女リーダー、マミヤであった。リンとの会話を終え、立ち去ろうとするマミヤ。その彼女の顔を見て、ケンは驚愕の表所を浮かべた。彼女の顔は、あの恋人・ユリアに瓜二つであったからだ。そんなことなどまるで知らないマミヤは、初対面のケンにまず名を問うたかと思うと、次の瞬間、突然持っていたヨーヨーを投げつけて来た。牙一族を倒したというケンシロウの実力を試そうとしたのである。しかし、並みの男なら頭を割られているその刃付きヨーヨーも、ケンとってもオモチャにすぎなかった。アッサリ指2本でヨーヨーを止めケンの実力を「なかなか」と評し、マミヤはその場を後にしたのだった。

 ケンが村に入ったことを確認したケマダは、どうせ襲う予定だった村だと一石二鳥気分で弟たちに村への襲撃を指示。しかし村側も、あらかじめバリケードを用意して対策を立てていたため、容易に村への侵入を許さない。バリケードを上ってきたところを槍で突いて倒したり、マミヤも火炎放射器を使い、雑魚を撃退。村側有利で戦闘が続く。しかし牙一族は、どこからか手に入れてきた装甲車に乗って村へと突撃してきた。火炎放射器の炎をものともせず、車はバリケードに激突。まだ完成に至っていなかったバリケードは脆くも崩れ去り、ついに村の中にまで牙一族達の侵攻を許してしまった。牙一族は、まずリーダーのマミヤの命を奪おうと歩み寄る。だがその時、リンの通報を受けてケンが到着。マミヤに鎌を振り上げていた男をあっさりと葬り去ったケンと牙一族のバトルが始まった。

 まずこの男を倒さねば村の占拠は成し得ない、そう思った牙一族は、華山群狼拳にてケンへの襲撃を開始した。しかし間髪入れずに飛びかかるその攻撃も、ケンの北斗翻車爆裂拳の前に敗れ去り、あっという間に牙一族の部隊は全滅。その模様を村の外から眺めていたケマダは、兄弟達の死に涙し、復讐を誓って帰っていくのだった。

 その神懸かり的な強さからケンシロウが北斗神拳の伝承者だと気が付いたマミヤは、ケンを村の用心棒にスカウトした。一度関わってしまったから貴方には断る権利はない、と強引に就職させられたケンには、とりあえず牙一族殲滅という目的が出来たのだった。

 そこより少し離れた荒野では、一人の女が盗賊達に追われていた。女の美しさに興奮状態のその男達は、自分達の言うとおりにしていれば食料をやると女を説得。しかしそれを聞いたその女は、突如身に纏っていたマントをはぎ取って正体を現した。マントの下にあったのは、水色の髪をした美しき男であった。その男・レイは、女の恰好をすることで飯のタネとなる者達をおびき寄せていたのだ。自分達を食料を運んでくるゲスとなじられた盗賊達は、いきり立ってレイに襲撃。しかし彼等はレイの使う拳によって次々と体を切断されていった。その拳は、あのシンと同じ南斗の拳の一つ、南斗水鳥拳であった。残されたリーダーは自ら不敗と称する十字剣ヌンチャクにて攻撃開始。しかし、気が付いたときには、男の両腕はそこに無かった。レイの拳の速さは、男の想像を超えていた。切り落とされた両腕を投げつけられ、パニっくに陥る男。そんな彼に対し、レイがとった行動、それは男の胸をあらためることであった。レイの旅の目的、それは、「七つの傷の男」を探しだすことだったのだ。男が目的の男で無いと知ったレイは、七つの傷の男に関する情報を尋ねた後、男を惨殺。男の懐に入っていた食料をかじりながら、レイは改めて己の執念の炎を燃やした。七つの傷の男を捜し出すまではなんとしても生き延びねばならない、と。
放映日:85年3月28日


[漫画版との違い]
ケンがマミヤと出会うシーン、レイの登場シーン以外はほとんどアニメオリジナル


・裁縫
ケンが靴を縫っているシーン。これを見た人からよく「ケンシロウ裁縫上手い→自ら破った服はこうして縫っているのではないか」という意見を聞いたりするが、あんな細切れにされた服を誰が縫うというのか。というかなんでみんなそんなこと(ケンシロウの服いっぱいある)なんかにこだわるんだろう・・・漫画だって割り切れぬのか・・・そういえば神谷氏も何かとこのネタを使うなあ。
・花壇
花を見て大層感激しているリンだが、サザンクロスにゃアホほど咲いてましたぜ。っていうかあんたの住んでた村、トマトが育ってたじゃん。トマトが育つのなら花だって咲くと思うのだが・・・
・マミヤの火炎放射器
映画「マッドマックス2」に出てきたシーンと似ている。19話のジーナの村のシーンでもあったね
・斬新演出
セル画を波打たせるというものすごく斬新な演出が見れます
・女装
レイ外伝によると、女装によって悪党をおびき寄せるのはユウなる子供から教わったらしい。その後は気に入ったのか、OVAユリア伝の中でも披露していた。また、これまたレイ外伝によると、南斗水鳥拳には男拳と女拳があり、その二つが合わさってはじめて完成するものだとか。この身長185cm、3サイズが133・93・108のレイを女だと思わせたのも、この南斗水鳥拳の女拳の力なのかもしれない。


第22話へ≪ ≫第24話へ