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須田氏へのインタブー記事 2012/1/26(木)
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 先日メールにて、イタリアの北斗の拳サイト「199X HOKUTO NO KEN」様から、あの須田正己氏にミニインタビューを行ったとのお知らせを頂きました。

 アニメ北斗ファンならご存知でしょうが、須田氏はアニメ北斗の作画監督を担当された、いわゆるです。ハッキリ言ってアニメ派である私にとっては原御大と肩を並べるくらいの神具合にあたる御方です。以前読んだ記事などを見る限りでは、どっちかというと外国での方が熱心なファンが多いみたいですね。

 このページがそのインタビューの内容なのですが、日常でイタリアと触れ合うことなどパスタとピザ以外に何も無い自分には勿論読むことは出来ません。しかし、心優しい199X様は、わざわざその全文を日本語に訳し、私にメールしてきてくださいました。そして、ホクサイにて公開してもかまわないとの寛大なお答えもいただきました。本当にありがたいことです。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

てなわけで、以下がそのインタビュー内容になります。
少し日本語が怪しい部分がありましたので、若干手直しさせていただきました。




199X
最近は、斬新なデザインを中心に、「北斗の拳」の新作が、劇場やホームビデオなどで公開されています。しかし、ファンの大半は20年前に須田氏が取りかかっていたテレビシリーズや1986年当時の劇場版の方を、今のものよりも好むようです。それに対しては満足しておられますか?
今もなお、比類なき成功を遂げた「北斗の拳」ですが、先生は当時の成功(これは未だに比類のないものとされていますが)を可能にしたのは、アニメーターの個人的な技術、それとも作業の進め方だったのでしょうか?


須田
1984年、TVシリーズから始まった北斗の拳に関して。
27年前、日本のアニメーションはまだ、複雑な線や影などが少ない、シンプルな作品でした。その時代に斬新な作品を、と、手探り状態の中で北斗の拳は始まりました。芦田監督と話しながら、今までの概念を超越するような構図重視、圧倒的迫力を強調して、世の中の親達の批判覚悟で作ったつもりでした。が、意外と批判もなく子供から若者にまで圧倒的に支持されたことを覚えております。その時代を作った作品、私的には大変満足しております。


199X
シングルフレームを完成させるのにどのくらいの時間を要しますか?鉛筆でのデッサンからデザイン画、さらに陰影のついた最終フレームまでどのようなプロセスに基づいて進められますか?


須田
私の場合ですが、絵コンテのストーリに沿ってイメージを膨らませます。例えば、アクションシーンを描く時は動きを想像していっきにラフで動きを作ります。その後の原画作業で重要なのはポースです。ましてや北斗の拳においてはキャラクターが発するオーラがとても重要です。キャラを生かすも殺すもそこに集約されます。(その当時のアニメでは考えてもいなかった作画方法でした)従ってポーズが決まれば影を多く加え、かっこよく決まったポーズに重厚感を付けるだけです。描く手間は時間的にアクションシーンの1カットでも30分も掛かりません。ただ、自分のなかでイメージが膨らむまでの時間が掛かりますw じっと待つだけです(笑


199X
北斗の拳シリーズで、キャラクターデザイナーとして、特に苦労された点、また、興味深かった点をおしえてください。


須田
TVシリーズが始まる頃、原作本の最初の頃はケンシロウもまだ若く、線も少なかったのですが、徐々にリアル感も増し、線も多くなっていき、TVキャラクターデザインのケンシロウも描いているうちに変わって行かざるをえませんでした。しかし、それはリアルさを増し、非常に楽しく刺激的でした。各作画監督も戸惑っていたようでしたが(笑)


199X
テレビシリーズの49話で、絵のタッチがそれまでと全くかけ離れていて、 スタッフではない外部の人の手によって描かれたのではないかとの噂が広まっていますが(笑)、どうしてそのようなことになったのでしょうか?須田氏はこのことに関して納得されていますか?(例えば、笑みを浮かべる赤毛のケンシロウ)


須田
それはあの時代の東映アニメーションでの制作体制にありました。TVシリーズはキャラクターデザイナーの私が1話から6話まではキャラクターや動きを責任をもって見ますが、あとは各作画監督がキャラクターと動きを統一します。しかし、あの時代にこれほどリアルな絵を描けるアニメーターはほとんどいませんでした。そんな中、東映が発注したスタジオが、作品の趣旨を無視し、勝手に暴走して作画をした事もあったようでしたが、制作期間のない中、出来上がってしまった作品をみて各関係からいろいろな発言もあったようです。従って納得はしておりません。


199X
北斗の拳シリーズを通して、あのように強烈で力強い映像を作り出すことに対して、どのように感じられましたか?現場はどのような雰囲気でしたか?


須田
やはりキャラクターの感情表現にこだわったところだったかと思います。27年前に表情での感情表現は有りましたが身体での感情表現方法はなかったからでしょう。それが印象として見た人を惹きつけたのではないでしょうか。今ではごく普通にアニメ表現方法として使われてはいますが・・・w
現場は熱く、スタッフの暴走を止めるのが大変でした(笑


199X
テレビシリーズでは、線描においても、グラフィック効果においても、それまでの常識がすべて覆されました!80年代にどうしてこのような革新的なことができたのでしょうか?


須田
80年代はアナログの時代でしたので全てが手作業によるものでした。これまでにない新しい世界観を表現するためには実験的な表現方法も取り入れなければと、それぞれのパートでエネルギッシュに試行錯誤を繰り返し成しえられたものと考えます。


199X
7つめの質問で最後になります。(北斗の7つの星になぞらえて)
登場人物たちを、核戦争後という時代背景から切りはなして、今の私たちの世界においてみることを考えられたことはありませんか?作業中にスタッフ間で議論されたことはないのでしょうか?


須田
あの頃アメリカ映画でマッドマックスをいう映画が大ヒットしましたが、それがベースになっているのはわかると思います。この時代背景は乾いた世界なので壮絶感、悲壮美も増したのではないでしょうか。80年代の日本はバブル絶頂期で平和呆け真っただ中、日本では過去の戦争のことも薄れてきた時代でしたので殆んど議論になることはありませんでした。今となっては原発問題や東北大震災などでいろいろ深刻議論もありますが・・・

以上が私の答えです。




須田様、199X様、貴重なインタビュー記事をありがとうございました。


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