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北斗が如く




メインストーリー



〈序章〉
絶望の男


 一子相伝の暗殺拳 北斗神拳。その伝承者であるケンシロウは、奪われた婚約者ユリアを取り戻すため、宿敵シンの居城へと乗り込む。怒りを携えたその拳で、シンへのリベンジを果たすケンシロウ。だがシンの口から語られたのは、既にユリアが自害し、この世を去ったという哀しき知らせであった。

 だがその後、ケンシロウは、ユリアが生きているとの噂を耳にする。一縷の望みを胸に、再び荒野へと旅立ったケンは、ルカという少女が住む村へとたどり着く。そこで聞いたのは、"ユリア"を名乗る女性、そしてそれを守護する一団が、「奇跡の街」へ向ったとの情報であった。遥か北にあるというその街の名は「エデン」。聖女によって統治されしその場所は、この荒廃した世界の中で、水や食料、そして電気をも豊富に備えた、まさに奇跡のような街なのだという。




〈第一章〉
奇跡の街


 旅の末に「エデン」へと辿り着いたケンシロウ。既に街の外は、噂を聞きつけた人々で溢れかえっていた。だが強固な壁に囲まれたその街は、余所者を迎え入れない排他的な姿勢を崩そうとはしなかった。そんな中、現れた野盗団を蹴散らすケンシロウの姿を見て、一人のモヒカン男がケンに銃を突きつけてきた。エデン衛兵隊の隊長だというその男・ジャグレは、怪しげな拳法を使うケンシロウを危険視し、エデンの地下牢に収監するよう命ずるのだった。

 その夜、牢を破って脱獄したケンシロウは、ユリアを探すために街へ。厳重な警備に阻まれ、動けずにいたケンシロウの前に、キサナと名乗る女が現れる。事情を聞いた彼女は、ケンにとある催しへの出場を勧めてきた。その名は「囚人闘技」。エデンの囚人同士が闘うそのイベントで、最後まで勝ち残る事ができれば、この街の統治者にどんな願いを聞いてもらえるという…。




〈第二章〉
囚人闘技


 囚人闘技に参加したいというケンシロウの願いを、ジャグレは意外にも快く承諾した。順当に闘いを勝ち抜き、最終戦へと辿り着いたケンシロウの前に現れたのは、地下10階に収監されし悪魔の化身・デビルリバースと呼ばれし大巨人であった。囚人闘技とは、いわば公開処刑。どれだけ勝ち進もうと、最後はこのデビルの生贄となって殺されるだけの"見世物"なのであった。

 しかし、ジャグレや観客達の予想を裏切り、勝ったのはケンシロウの方であった。勝者となったケンの前に現れた、エデンの「指導者」。その正体は、昨晩ケンシロウに囚人闘技への参加を薦めてきた女、キサナであった。ユリアという女に会いたい――――。それが、勝者であるケンシロウが望む、唯一の願いであった。




〈第三章〉
凶兆


 水や食料、そして電気をも有する街、エデン。その恵みは、街に隣接する謎の施設「スフィア・シティ」から生み出されていた。今は亡きエデンの創設者であり、キサナの父でもあるナダイは、その恵みを守るため、街を囲う高い城壁を築いたのであった。

 だがその日、侵攻して来た「凶王軍」の手により、強固な城門は破壊された。次々となだれ込んでくる敵兵の前に、混乱に包まれるエデン。そして凶王軍No.2の男・タルーガの手により、ジャグレが殺されそうになったその時、怒りを纏ったケンシロウが立ちはだかる。高速移動と二丁拳銃を武器にケンシロウを攻め立てるタルーガであったが、ケンの北斗神拳はその力を遥かに上回っていた。

 形勢逆転。凶王軍が撤退を始める中、ジャグレはタルーガに止めを刺そうとする。だがその時、敵将である「凶王」の拳がジャグレの首筋を捉えた。ケンシロウも見たことの無いその謎の拳により、ジャグレの精神は完全に崩壊させられていた。




〈第四章〉
監獄伝説


 診療所の医師リハクによると、このままではジャグレは狂人と化してしまうという。治しうる人物はただ一人、ケンシロウの義兄、トキを置いて他に無かった。トキと会うため、不落の監獄カサンドラに向かおうとするケンシロウに対し、キサナは告げた。もしジャグレを救ってくれたら、私の知るユリアの情報を提供すると。

 バットの助けを借り、車を手に入れたケンシロウは、リハクらと共にカサンドラへ。監獄を統治する獄長ウイグルを撃破したケンシロウは、数年ぶりに義兄トキと再会。ジャグレは事なきを得たのだった。トキによると、凶王が使った拳は「冥斗鬼影拳」。闘気をもって相手の精神を破壊するという伝説の拳法であった。

 トキをカサンドラに閉じ込めた男、拳王。その正体は、北斗四兄弟の長兄・ラオウであった。彼が恐れたのは、ケンシロウがトキと会い、その拳を学ぶこと。ラオウの激流の拳に対抗しうるトキの清流の拳。それを自らのものとすることで、ケンはいずれ訪れるであろう兄ラオウとの決戦に備えるのだった。




〈第五章〉
陰と陽


 キサナのもとへ戻ったケンシロウに待っていたのは、身に覚えの無い嫌疑であった。エデンを訪れた南斗の男・レイの証言に拠ると、彼の妹アイリを浚った男は「七つの傷を持つ北斗神拳の使い手」なのだという。無実を証明するためには、民衆の前で戦い、勝つより他にない。それがエデンに定められし「決闘」という名の公開裁判であった。

 エデンの夜を仕切る女・ライラより決闘の許可を受け、コロセウムにてレイと対峙するケンシロウ。もはや話しても無駄だと悟ったケンシロウは、全力を持ってレイと戦い、その怒りの拳を凌駕する。大勢が決しながらも、傷ついた体を起こし、再びケンシロウに立ち向かわんとするレイ。だがその時、南斗五車星の一人、風のヒューイが二人の闘いを制止した。彼らが連れてきた女。それは紛れも無く、行方知れずとなっていたレイの妹・アイリであった。ケンシロウに己の過ちを詫び、妹の下へと駆け寄ったレイは、涙を流してその身体を抱きしめるのった。

 ケンシロウとレイの闘いを煽動したのはリハク。彼もまたユリアに仕える南斗五車星の一人であった。かつてシンにユリアを奪われたケンシロウが、もしユリアと再会できたとして、今度こそ彼女を守りきれるだけの器量があるのか。それを確かめるため、リハクはシンと同じ南斗のレイをケンシロウにぶつけ、その力を見定めようとしたのであった。




〈第六章〉
再会


 約束通りユリアの情報を話す。そう言ってキサナがケンシロウを連れてきたのは、スフィア・シティの前であった。その中にある、どんな傷をも治すことができるという「奇跡の間」。そこにユリアは向かったのだという。しかし扉が閉まったことで、安否は不明のまま。開け方を知るのは、先代統治者のナダイのみ。だが3年前、父ナダイが母をその手で殺す瞬間を目撃したキサナは、その場でナダイを刺殺したのだった。

 ユリアの姿を確認するため、スフィア・シティを覆う山の頂上まで登ることになったケンシロウとジャグレ。だがそのためには、狂人たちが住まう「鬼憑き村」を通らねばならなかった。村へと入ったケン達に向け、一斉に襲い来る"鬼憑き"。その姿を見たケンシロウは、彼らの正体に気付いた。人の心を壊し、狂人へと変貌させる拳。それは凶王の冥斗鬼影拳によるものに違いなかった。

 頂上へとたどり着いたケンシロウに、一人の男が闘いを挑んできた。男の名はナダイ。死んだとされていたキサナの父であった。生きて密かにエデンを出たナダイは、この山からエデンを、そして娘キサナの事を見守り続けていたのだった。

 山から見下ろせる「奇跡の間」の中には、眠れるユリアの姿があった。どんな傷も治るというその部屋の力を、かつてナダイは妻に使おうとした。だが結局妻はそれを拒み、最期は愛する者の手で送って欲しいと願い、ナダイに殺されることを選んだのだった。

 エデンに戻れぬ自分に代わり、キサナを守って欲しい。ナダイはそうケンシロウに告げた。いずれエデンに崩壊の時が訪れることをナダイは知っていた。そして今まさに、「聖帝軍」という名の脅威がエデンに迫ろうとしていた。




〈第七章〉
南斗最強の男


 ケンシロウ達がエデンへと戻った時、既に街は聖帝軍によって制圧されていた。立ちはだかる聖帝侵攻隊を蹴散らしながら、サウザーのいるナイトクラブへと向かうケンシロウ。扉を開けたその先にあったのは、南斗鳳凰拳の前に敗れたレイの姿、そしてキサナをその手に納め、勝利の美酒を呑むサウザーの姿であった。

 水、電気、そして女をも豊富に蓄えたエデンを気に入り、この地を新たな聖帝の居城にすることを宣言するサウザー。そうはさせじとサウザーに必殺の秘孔・人中極を叩き込むケンシロウであったが、謎の力によって無効化されてしまう。しかし拳を交える中で、ケンはその謎の解明に至った。心臓の位置も逆、秘孔の位置も表裏逆。それがサウザーの持つ「帝王の体」の正体であった。

 秘奥義である天翔十字鳳をも破られ、劣勢に追い込まれるサウザー。更には駆けつけた五車星らの奮闘により聖帝軍は敗走を開始。もはやこれ以上闘っても利はない。そうリハクより告げられたサウザーは、撤退を選択する。己が否定する「愛」。その愛のために闘い続けるケンシロウがどこまでやれるのが、それを見届けてやると言い残し、サウザーはエデンを後にするのだった。

 統治者でありながら、サウザーに対し何一つできなかった己の弱さに涙するキサナ。だがそんな彼女にケンシロウは告げる。多くの仲間に慕われ、見守られているお前こそが、エデンの光となって導ける存在。父を超える必要は無い
お前はお前のやり方でエデンを守ればいいのだと。




〈第八章〉
歪んだ殺意


 復興を目指し、住民達が一丸となるエデンの街。そんな中、キサナはエデンの全面解放を宣言する。人々が互いを信じ、支えあって生きていく。それがキサナが選んだ、父とは違う新たなるエデンの歩むべき道であった。

 一方、街では「黒い仮面の七つの傷の男」に被害を受けたとの報告が相次いでいた。その男がアイリを浚った張本人であり、そしてかつての兄弟子ジャギであることを確信したケンシロウは、レイと共にエデンを捜索する。だがそんな彼らの前に現れたのは、4人のジャギであった。影武者を用意しての謎の行動…。その真意は、タルーガにアイリを浚わせるための時間稼ぎであった。利害の一致から、ジャギは凶王軍と結託していたのだった。

 手出しできないレイに秘孔を突き、アイリと共に人質に取るジャギ。ケンをコロセウムへと呼びつけたジャギは、「一歩も動くな」と枷をつけ、ケンとの対決に臨む。だがその最中、突如現れたナダイにより、レイは救出された。ナダイが見せた拳……それは凶王と同じ、冥斗鬼影拳であった。

 人質を失い、ケンシロウに追い込まれたジャギは、最後はレイの斬撃によってその身を八つ裂きにされた。残されたタルーガ達もまた衛兵によって捕らえられた。しかしキサナは、彼らを処すことなく解放した。人間を信じ、共に分け合う道を模索する。それがキサナの目指す新たなエデンの有り方なのであった。




〈第九章〉
究極への渇望


 ある夜、突如スフィア・シティの外殻が開き、放電を始めた。それは、タイムリミットが迫っていることの証であった。スフィア・シティの正体は、高速増殖炉を兼ねた世界最大の核ミサイル発射施設。そしてユリアの眠る「奇跡の間」が、その制御室なのだという。そんな場所にユリアを入れるよう指示した人物。それは、ケンシロウの義兄にして世紀末覇者「拳王」を名乗る男、ラオウであった。

 時を合わせるかのように、ラオウがエデンに姿を現した。だがナダイが既に死んでいる事を知らされたラオウは、激高する。ユリアが眠る寝台は、核ミサイルの発射装置。彼女が眠りから覚めて身を起こした瞬間、再び世界は核の炎に包まれるのだという。それを防ぐには、タイムリミットまでにユリアを起こし、助け出すより他にない。だがスフィア・シティの扉を開けられるのは、ナダイの冥斗鬼影拳だけなのであった。

 ラオウがユリアを救おうとした理由。それは、彼女が「南斗聖拳の究極奥義」の鍵だからであった。だが最早それを手にすることは適わない。そう判断したラオウは、山頂から槍を投げ、ユリアを殺そうとする。しかしケンはその手を止め、ラオウに告げた。ナダイは生きている。知りたければ俺と戦えと。

 ケンシロウとラオウ。最強の二人の拳が交錯する。ユリアを巡り、熾烈な闘いを繰り広げる両雄。だが二人がユリアを求める理由は、全く違った。ただ愛のために闘い、そして哀しみを背負える男。その資質を持つケンシロウこそが最強へと近付ける。それを知ったラオウは、闘いを中断し、この場は引くことを選んだ。ユリアを助け出し、最強の北斗と南斗の究極を得たケンシロウを倒す。それが、ラオウの目指す「北斗をも越える最強」なのであった。




〈第十章〉
凶王の陣


 凶王の正体はナダイ。ケンシロウから語られたその事実に、キサナとジャグレは驚きを隠せなかった。だがそれも全てはエデンのため、そしてキサナの身を案じての事。ならばナダイを説得すれば、スフィア・シティの扉を開き、ユリアを救えるかもしれない。そう考えたケンシロウは、凶王と接触するため、情報収集へと動く。

 凶王軍は根城を持たない流浪の集団であった。その移動先を決めているという「荒野の賢者」のもとへと訪れるケンだったが、大した情報は得られず空振りに終わる。しかし、エデン随一の情報網を持つライラの協力により、遂に凶王軍の陣を特定したケンシロウは、単身その敵陣へと乗り込む。

 立ちふさがる多勢の凶王軍を蹴散らし、遂に凶王のもとへとたどり着いたケンシロウ。ユリアを救いたいと協力を持ちかけるケンシロウであったが、凶王はこれが答だと言わんばかりに、ケンに向けて引金を引いた。もはや止むなしと、凶王の殺意に拳を持って応えるケン。しかし、割れた仮面の下から現れたのは、タルーガであった。彼がナダイより任されたのは、ケンシロウを陣に足止めすること…。核ミサイルの発射を確実に止めるため、ナダイはユリアの命を奪うことを選んだのだった。




〈最終章〉
北斗の男


 闇に紛れ、スフィア・シティの前へと現れたナダイは、雷の力をもって扉を開いた。ユリアを殺し、確実に核の発射を止めるために。だがそのためには、ケンシロウと闘い、勝利するより他になかった。ユリアへの想い、そして愛を背負い闘うケンシロウの前には、本気の冥斗鬼影拳をもってしても敵うはずがなかった。

 勝負が決したその時、凶王軍の軍勢を引き連れてタルーガが現れた。それに協力し、キサナとナダイを人質にとったのは、ジャグレとライラであった。三人の目的は、ナダイへの復讐。彼らの父親は、スフィア・シティの秘密に近付き、ナダイによって殺されていたのだった。身内を殺される痛みを味わわせる。その取り決め通り、キサナに銃口を向けるジャグレ。だが彼には、愛する女を撃つことなど出来なかった。

 その時、タルーガの銃がジャグレとライラを撃ち抜いた。彼の真の狙いは、復讐ではなく、スフィア・シティの持つ核の力。それを手にするためにジャグレらと組み、ナダイに扉を開けさせるよう仕向けたのだった。核戦争によって体の半分以上が機械と化したタルーガにとって、ナダイの雷の力は天敵。ケンとナダイの戦いもまたタルーガの筋書き通りであった。立ちはだかる凶王軍を蹴散らしながら、「奇跡の間」へと向かったタルーガを追うケンシロウ。だが到着したとき、ユリアはまだ生きていた。タルーガの真の野望……それは世界を核で焼き尽くし、浄化された新たなる世界で神として君臨することなのであった。

機械の身体が生み出すスピードと体術。そして二丁の銃を組み合わせた独自の戦闘法でケンシロウを攻め立てるタルーガ。だが彼は「神」にはなれなかった

「お前はもう死んでいる」

神は死なない――――。秘孔を突かれ、死した身体となったタルーガには、その資質は無かったのだった。

緊急防御装置が作動し、スフィア・シティの外殻が再び閉じた。これで核が発射されても外に衝撃は無い。だが中の人間は……。

「愛してる……ユリア」
「俺と一緒に……死んでくれ」

目覚めた恋人にケンシロウが告げる。そしてユリアはそれに優しく頷く。堅く抱擁する二人の身体を、破滅の光が包み込む……。




エピローグ

ケンシロウとユリアは生きていた。核ミサイルが発射された直後、二人はナダイによって寝台のカプセルへと押し込まれ、命を救われていたのだった。最後に、ケンシロウへの感謝の言葉を述べ、ナダイは妻のもとへと旅立ったのであった。

衛兵隊長ジャグレ。そして聖女キサナ。二人が中心となり、エデンは新たなる道を歩み出す。偉大なる統治者ナダイの死を糧として。