風仁拳。風を友とし、岩をも切り裂く真空波を生み出す拳の門派に、一人の天才児がいた。道場を訪れたリハクは、その少年、ヒューイの拳の切れ味を目にし、風仁拳の未来は安泰と語るが、一門の師には思い悩むことがあった。それはヒューイがあまりに才に恵まれていたこと・・・。幼いながらも切れ味鋭いその拳は、ヒューイのまわりから友と、対等に戦える相手を奪っていた。守るべき者のない拳に奥義は宿らない。孤独が続き限り、ヒューイの拳が高みにのぼることはなかったのだった。 その夜、風仁拳の道場に二人の少年が訪れた。強い相手を求めてやってきたシュレンなる少年と、それを止める同門の友。彼らは、炎燐拳なる一門の者達であった。門番の二人の男を易々と倒したシュレンは、この道場一の使い手であるヒューイとの対決に臨む。相手を求めていたヒューイの前に現れた、同世代の天才児・・・。この出会いは、リハクが齎したものであった。彼は、この二人の少年に、大いなる凶星を打ち砕くほどの可能性を見ていたのだった。 鋭い拳の応酬で互角の戦いを繰り広げ、互いの力量を認め合う二人。だがシュレンはその攻防の中で、既にヒューイの体に燐を撒いていた。シュレンが炎を飛ばすと同時に、たちまち火達磨となるヒューイ。しかし風を自在に操るヒューイにとって、炎を掻き消すことなど造作も無かった。ただの炎では風の壁を越えることは出来ない。そう考えたシュレンは、自らの両手を糧とした盛る炎でヒューイへと突撃する。それを受けヒューイもまた奥義を繰り出す。だが二人の拳がぶつかるその瞬間、割って入ったリハクが二人を吹き飛ばした。お前たちが命を賭して戦う時は今ではない。リハクのその言葉を受け、冷静さを取り戻した二人には、良き相手と出会えたという充実感だけが残っていた。風と炎が一つとなるとき、それは千の兵を焼き尽くす業火となる。この二人の少年が、星の導きによって歴史を作っていく。リハクはそう確信するのだった。 しかし現実は甘くは無かった。南斗最後の将を守る五車星となったヒューイとシュレンは、世紀末覇者拳王の剛拳の前に成す術無く敗れ去り、自らの見た未来が空想であったことを知ったリハクは、ただ深く煙草を吸うのだった。 |
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ヒューイ |
風仁拳の次期伝承者。歴代の風仁拳伝承者を陵駕し、六聖拳に匹敵するほどの可能性を秘めていたが、その才ゆえに同門の拳士達からも恐れられ、心通す友も対等に足るものも無く、孤独な日々を送っていた。しかしリハクの導きによって訪れた炎燐拳のシュレンと戦い、己と同世代の互角の強さを持つその男との出会いが運命を変革。後にシュレンと共に五車星の一人となり、兄弟の契りを交わすが、リハクが予見した「大きな使命を背負った歴史を作る者」にはなれず、拳王の剛拳の前に粉砕された。 |
シュレン |
炎燐拳の内弟子。同門の友と共に風仁拳の道場へと押しかけ、そこで一番の使い手であるヒューイと対決。だが燐による炎の拳はヒューイの操る風によって消し飛ばされ、最後は自らの身を焼いて攻撃しようとしたが、リハクが割って入り水入りとなった。その後、同世代で互角の拳を持つヒューイと友人を越えた仲となり、共に五車星の一員に。ヒューイを葬った拳王に復讐の炎を燃やすが、自らもまたあっけなく葬り去られた。 |
リハク |
後の南斗五車星 海の男。風仁拳の若き天才・ヒューイに、炎燐拳の天才・シュレンをぶつけ、互いに切磋琢磨しあうライバル関係を作った。いずれはこの二人が大いなる凶星を打ち砕く拳士へと成長し、大いなる宿命を背負う可能性を感じていたが、実際はラオウの剛拳に二人ともなす術無く敗れ去り、完全に予想を外した。 |
風仁拳の師 |
ヒューイに風仁拳を教える師匠。ヒューイの才を認めながらも、強すぎるが故に練習相手も友もいない孤独な境遇に陥ってしまっている事に憂いを感じていた。しかしリハクが画策して導いた炎燐拳のシュレンが、ヒューイのよき友となってくれたため、いずれ風と炎が一つとなりしとき、千の兵を焼き尽くす業火となりえる可能性を感じた。 |
風仁拳門下の男達 |
風仁拳の練習生達。夜中に道場の門の見張りをしていたところにシュレンが訪れ、追い返そうとするも、逆に二人纏めて打ちのめされた。 |
シュレンの友人 | ||
シュレンと同じ炎燐拳の同門。風仁拳に腕試しに行こうとするシュレンを止めるために一緒についてくるが、結局闘いをとめることは出来なかった。
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ラオウ |
拳王軍の王。五車星として挑んできたヒューイとシュレンをあっけなく葬り、かつてのリハクの予言を台無しにした。 |
トウ |
リハクの娘。ヒューイとシュレンが敗れたことをリハクに報告した。 |
風仁拳 | |
ヒューイが学ぶ拳法。風を刃と化し、敵と打ち合わずして切り刻むという拳。「大地に生と死を運び、目に見えず感じるもの、それを友とし、その中に真空を生んだならば、それは全てを両断しうる翼と化す」との言い伝えがある。 ヒューイの才能は歴代の伝承者を陵駕し、六聖拳に匹敵しうる可能性をも秘めていたが、強すぎるが故に対等に戦えるものもなく、その孤独故に風が万里を越えることはなく、守るものがいない拳に奥義は宿らないと師は憂いていた。 シュレンの炎燐拳との闘いでは、風の力で炎を寄せ付けないという相性の良さを見せ、風斬烈掌などの奥義で攻め立てたが、リハクが間に割って入り水入りとなった。 |
風斬烈掌 | |
風仁拳の奥義。シュレンの双炎飛翔拳を迎え撃つ為に使用しようとしたが、ぶつかる直前に双方ともリハクに吹っ飛ばされてしまったため、全容は不明。 |
炎燐拳 | |
シュレンが学ぶ拳法。燐を用いて自在に炎を操り相手を燃焼させる拳。ヒューイとの闘いでは事前の攻防でヒューイの体に燐を撒いておき、拳を使うと同時に相手を炎に包んだ。しかし風を操るヒューイの風仁拳とは相性が悪く、全ての炎を風で消し飛ばされてしまった。その後、炎掌爆滅拳や双炎飛翔拳などを繰り出してヒューイと渡り合ったが、リハクが間に割って入り水入りとなった。 WEB更新の時は「炎輪拳」と表記されていた。 |
炎掌爆滅拳 | |
炎燐拳の奥義。両手のまわりに炎を纏って攻撃する技だが、ヒューイの起こした突風によって炎が押し返され、無力化された。 WEB更新の時は「南斗爆炎拳」になっていた。 |
双炎飛翔拳 | |
炎燐拳の奥義。両手に炎を纏わせたまま上空から相手に襲い掛かる。手を直に炎で燃やし、己の身を糧とすることで火力を増しているのが特徴。ヒューイの風斬烈掌との打ち合いになったが、間に入ったリハクが双方を吹き飛ばしたため、不発に終わった。 原作でラオウに最初に飛び掛かった際の攻撃に似ている。 |